慢性ウィルス性肝炎と肝臓癌
現在、日本では肝臓癌による死亡者数はこの25年間で3倍に増え、1年間で約3万人を超える方が肝臓癌で亡くなっているといわれています。 これは悪性新生物(がん)の死亡順位の第3位に相当します。そしてこの肝臓癌の95%の方には肝炎ウイルスの感染がみられます。 一方、わが国の慢性肝炎の大部分はB型肝炎ウイルス(HBV)かC型肝炎ウイルス(HCV)の感染によるウイルス性肝炎であると言われています。 したがって、これらのウイルス性肝炎に対する治療は、肝臓癌を減らすために非常に重要な意味を持つのです。
B型・C型慢性肝炎
現在、わが国にはB型肝炎ウイルス保有者(「キャリア」と呼びます)は約130万人~150万人、C型肝炎ウイルス保有者(キャリア)は約150万~200万人いるといわれております。 これらの方々にすべて治療が必要というわけではありませんが、肝機能が悪化しているのを知らずに放置していると、次第に慢性肝炎から肝硬変へと病気が進行し、ついには肝臓癌に至ることがあるのです。
検査
肝炎ウイルス保有者の方すべてに治療が必要なわけではありません。自然に治った方や、肝機能が安定している方の場合は、治療せずに定期的に血液検査を行い、経過観察を行います。問題なのは、肝機能が安定していない(GOT、GPTが上昇し、肝機能異常を示している)方です。これらの肝機能が安定している方と、肝機能異常を示している方とは、血液検査などをしないと見分けがつかないということ、さらに、肝機能が安定しても、突然肝機能異常を起こすことがよくあるということです。
そこで、肝炎ウイルス保有者の方や、肝機能異常を示している方では、症状が無くても、一般的な肝機能検査(いわゆるGOT,GPTなど)に加え、ウイルスの型・量を調べる検査や、超音波検査(エコー検査)などを定期的に行い、肝臓が現在どのような状態にあるのかを把握する必要があります。
治療
B型慢性肝炎においては、肝機能異常を示しても、若い人ではしばしば自然経過で肝炎が落ち着く場合があり、治療が必要な状態か、自然に肝炎が落ち着くのを待つべきか、判断が難しいことがしばしばあります。積極的に治療が必要な場合、抗ウイルス薬(インターフェロン、ラミブシン、アデフォビル)やミノファーゲン、ウルソなどの投与を行います。
C型慢性肝炎の場合は、B型慢性肝炎と異なり、自然経過で肝炎が落ち着くことは少なく、肝機能異常を示す場合、何らかの治療が必要と考えられます。積極的に治療が必要な場合、インターフェロンやリバビリン、ミノファーゲン、ウルソなどの投与を行います。