がんに対する腹腔鏡手術
■ 腹腔鏡とは
腹腔とはなんでしょう?
身体の中には長い腸が折りたたまれるようにしてお腹全体に存在していますが腸と腸の隙間の空間のことを腹腔と呼びます。
腹腔鏡とはなんでしょう?
胃を観察することができる胃内視鏡、膀胱の中なら膀胱鏡、つまり腹腔内を観察することのできる道具が、腹腔鏡(写真上)ということになります。特殊な道具で腹腔にガスを注入して隙間を広げ、十分に広がったところで腹腔鏡を挿入すると腹腔内(お腹の中)の様子がテレビ画面に映し出せるようになります。このような、腹腔鏡を用いて行う手術なので腹腔鏡手術と呼ばれているのです。
■ 腹腔鏡手術とは
腹腔鏡手術では,腹腔鏡以外にも専用の道具を使用します。様々な用途に合わせて作られた鉗子と呼ばれる長い道具(写真下)で、これらを腹腔内に挿入するためには小さな傷さえあればよいことになります。-小さな傷でできる手術-と銘打つゆえんです。
■ 腹腔鏡手術の誤解
一般に、「傷の大きさ = 手術の大きさ」とのイメージが強いのではないでしょうか。そうであれば意外かもしれませんが、腹腔鏡手術は小さな手術ではなく、実際には開腹手術と同じことをお腹の中で行っているのです。むしろ腹腔鏡で撮影された臓器や組織はテレビ画面上で拡大して写し出されますので、最近では精密手術としての側面にも期待されるようになってきています。
■ 胃がん、大腸がんの手術を小さな傷で-
命を助けることが最大の目標であったがんの手術。医療の進歩により、術後のQOL(生活の質)向上もあわせて目標とすることが可能となってきました。日本では、胃がんに対する腹腔鏡下胃手術や大腸がんに対する腹腔鏡下大腸手術の施行数は年々増加しており、今後さらに腹腔鏡手術の需要が増加していくことが予想されます。
一つの傷で行う最新の腹腔鏡手術 -SILS(シルス)-
■ SILSとは-
腹腔鏡手術では腹腔鏡と専用の鉗子(かんし)を挿入して手術を行うため、手術の種類によって場所は異なりますが、いくつかの小さな傷がつくことになります。しかし道具の進歩と手技の向上により、一つの傷から手術を行うことも可能となってきました。SILSとはSingle Incision Laparoscopic Surgeryの頭文字をとった略語で、単創腹腔鏡手術(一つの傷の腹腔鏡手術)という意味になります。当科では2009年から胆のう摘出術にSILSを行っていますが、虫垂切除や胃部分切除などにも応用しています。
傷がどこかわかりますか-
*腹部の写真はすべてご本人の了解を得て掲載させていただきました。