院長ごあいさつ

梅雨の季節が近づいておりますが、先生方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。 赤字脱却をスローガンに経営改善に取り組んでおりますなか、先生方の温かいご支援に心より感謝申し上げます。

電子カルテの新規システム導入(9月)について

今回は、電子カルテ更新に掛かるコスト問題についてお話させてください。当センターは2011年から電子カルテを導入しており、今では当たり前のシステムになっています。おそらく院内で働く職員の半数以上は、紙カルテを災害時等の非常用手段として認識しており、紙カルテの運用経験もありません。電子カルテの導入によって、かつてのように三温表(温度板)への体温・呼吸数・脈拍数・血圧の折れ線グラフの記入も必要もなく、検査記録を貼付することもありません。

しかし、この電子カルテシステムの維持には、膨大な費用が掛かります。今回の入れ替えは、令和7年9月20日から23日にかけて、奈良県立病院機構の2病院(当院と県総合)で同時に行います。これは、県総合の電子カルテはWindows7、当院のものはWindows10で運用されており、いずれもサポートの有効期限を迎えること、使用しているサーバーや端末の老朽化等で、1回/6-7年は全面的に入れ替える必要がある為です。

また、電子カルテ本体だけでなく、中央放射線部、中央検査部、手術部、集中治療部、看護部、薬剤部、栄養部、リハビリ部などほぼ全ての部門で別々のメーカーの部門システムを据えており、これらも入れ替える必要があります。この初期費用として当院の規模で20億円以上、加えて毎年の膨大な維持費が発生します。十分な収益を上げながらこの維持費を捻出することは決して簡単なことではないと認識しております。

コロナ禍後の令和5年~6年に大幅な赤字を計上した為、全職員あげて経営の立て直しに取り組んできたさなか、電子カルテの更新時期を迎えたことは更なる負担となります。仮に大型医療機器の導入であれば、患者の皆さまに対してより新しく質の高い医療の提供ができるという大きなメリットがありますが、電子カルテの更新にはそのような側面がありません。

また、入れ替え後の電子カルテベンダーは従来通りにもかかわらず、データの多くが自動的に移行されない為、既存データの殆どを再度手入力する必要があります。入れ替え中やその後1~2週間は、使用する病院スタッフの大きな混乱が予測されます。できる限り患者の皆さまに影響が及ばないよう最大限の努力をしたいと考えておりますが、地域の医療機関の先生方にも大変なご迷惑をお掛けするかもしれません。詳細は9月の「院長ごあいさつ」の中で説明させて頂きます。

さて、ここからは前向きで明るいお話をさせて頂きます。

造影剤が10倍希釈!で撮像可能な最新の血管造影室

当院の血管造影室は合計4室あります。放射線科のIVR室、循環器内科の心カテ室・カテーテルアブレーション用の専用血管造影室が2室(バイプレーン室とシングルプレーン室)、そして脳神経血管内治療用の大型パネルの血管造影室です。

この脳神経用の血管造影室を3月にドイツ・シーメンス社製の最新式に更新しました。
これにより、鮮明な血管造影像をガイドとした脳血管内治療や下肢の血管内治療が可能となります。更に驚くべき点は、10倍希釈の造影剤でも鮮明にDSAが撮像できることです。

腎機能が不良な患者の皆さまにとりましても朗報であると考えており、脳神経血管内治療や下肢閉塞性動脈硬化症などの血管内治療にとりましても大きな進歩と言えます。

2管球の最新式CT撮影装置

これまで10年稼働し続けたキャノン社製320列CTを、ドイツ・シーメンス社製の2管球の高速CTに更新しました。これとは別に2020年購入のキャノン社製80列CTが稼働しております。

2管球CTでは、例えば、これまでの1管球CTではできなかった肺のパーフュージョン撮像が可能となり、肺動脈血栓の描出だけでなく、肺血流低下領域を鮮明に映し出すことも可能となりました。同じガントリーを別の管球2つが高速で回転し、体内を2種類の撮像で映し出すことで、診断機能が格段に向上しました。心臓CTにおいても、これまでの320列CTと比較すると、低被爆で高精細な画像提供が可能となっています。赤字を計上し、あらゆる経費削減を行っている状況にあっても、患者の皆さまへの診療の質に関しては、最高のレベルを維持し続けることを何より優先させて頂きました。

ご紹介頂きます患者の皆さまにもより精緻な画像のCT診断を提供させて頂くことができ、院長としても大変嬉しく思っております。上記のような血管造影装置やCTのハイエンド化ができたのは、コロナ禍の期間に電力の受電能力を上げるためのキュービクル増設工事を完了できたからです。
(大型医療機器の導入・運用に対応できる電力消費を確保する為には受電設備であるキュービクルの増設が必要不可欠と判断し、工事を進めて参りました)

心臓血管外科の外来診療体制について

令和7年3月をもって心臓血管外科の医師が退職となりました。

これに伴い、本年4月から奈良県立医科大学胸部・心臓血管外科学講座の細野光治教授に、毎月2回(第2金曜日午後と第4金曜日午後)に外来診療をして頂いております。先生方からご紹介頂く循環器疾患の患者さんの殆どが循環器内科への紹介であるとは思いますが、心臓弁疾患や大動脈瘤の手術適応についてのご相談は、細野教授の外来でお受けしております。ご遠慮なくご紹介頂ければ幸いでございます。

尚、下肢閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行や下肢の虚血)については、循環器内科の岩井篤史医長(月曜日午後と木曜日全日)の外来にご紹介頂ければ、血管内カテーテル治療・内服治療を含めた診療をさせて頂きます。

眼科の診療体制について

西和医療センターの眼科診療は現在、外来診療並びに外来手術となっており、奈良県立医科大学からの医師の派遣による診療体制となっています。眼科の外来診療は月曜日から金曜日まで毎日行っており、月曜日の外来と水曜日の手術については、令和7年4月に奈良県立医科大学眼科学講座の教授に就任されました加瀬諭(かせさとる)先生が担当して下さっています。眼科疾患についても是非、ご紹介頂けましたら幸いでございます。

がんの診療体制について

令和7年4月より奈良県西和医療センターは、奈良県地域がん診療連携支援病院に指定されました。

当院のがん治療センター長の石川博文副院長(大腸外科)、総合内科・腫瘍内科・呼吸器内科の中村孝人副院長、がん相談支援センター長の高島勉乳腺外科部長が中心となり、がん診療の更なる充実に努めております。

また、毎週木曜日には奈良県立医科大学のがんゲノム・腫瘍内科学講座教授の武田真幸先生にも、気管支鏡やがん診療カンファレンス等の充実の為、院内での活動を担って頂いております。

西和医療センターはこれからも西和地域のがん診療の質の向上に一層努めて参ります。

 

最後に、5月31日(土曜日)にJR王寺駅前のりーべる王寺(5階リーベルホール)で開催しました「奈良県西部地域医療連携の会」について、ご参加頂きました登録医の先生方、医師以外の医療関係者の皆さま、誠にありがとうございました。社会環境の変化を踏まえ、以前のようなホテルでの講演会は控えておりますが、先生方とはいつでも顔の見える関係を保ち、お互いの信頼関係の中で、更に密接な連携につなげたいと考えております。

 令和13年度にJR法隆寺駅前に開院予定の新西和医療センターの基本設計が今年度の下半期から県庁と病院機構で始まると聞いております。建築費の高騰が続いている状況ではありますが、地域住民の皆さまや地域の医療機関の先生方のご意見が少しでも多く反映されるよう、努力を続けて参る所存でございます。これからも先生方からのご指導、ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

令和13年度にJR法隆寺駅前に開院予定の新西和医療センターの基本設計が今年度の下半期から県庁と病院機構で始まると聞いております。建築費の高騰が続いている状況ではありますが、地域住民の皆さまや地域の医療機関の先生方のご意見が少しでも多く反映されるよう、努力を続けて参る所存でございます。これからも先生方からのご指導、ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

令和7年6月吉日

奈良県西和医療センター院長 土肥 直文

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