膀胱癌

膀胱癌は、膀胱にできる癌の総称です。膀胱癌の大部分(90%以上)は膀胱の内部をおおう尿路上皮にできる尿路上皮癌です。癌が膀胱の壁のどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)によって、筋層非浸潤性癌と筋層浸潤性癌に分類されます。膀胱には、尿路上皮癌のほかに扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌などの種類もありますが、このページでは尿路上皮癌について説明しています。

症状

膀胱癌の主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。血尿には、尿の色が赤や茶色になり目で見てわかる血尿と、顕微鏡で確認できる血尿があります。癌が進行すると、尿が出にくくなったり、わき腹や腰、背中が痛んだり、足がむくんだりすることもあります。

このうち注意が必要な症状として痛みなどほかの症状を伴わない血尿(無症候性血尿)があります。ほかに症状がなく、血尿も出たり出なかったりすることがあるため、受診せずに放置している間に進行してしまうこともあります。気になる症状がある場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。

治療

【筋層非浸潤性膀胱癌】

1)TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

尿道から膀胱内に内視鏡を挿入し、癌を電気メスで切除する治療法で、病理検査も兼ねて行います。全身麻酔または脊椎麻酔が必要となります。筋層非浸潤性膀胱癌の場合、癌を完全切除できることもありますが、たびたび再発がみられ、繰り返し手術を行う場合があります。

またTURBTで筋層浸潤性がんと診断された場合には後述の膀胱全摘術が必要となる場合があります。

2)膀胱内注入療法

膀胱内注入療法は、TURBTの後に、再発や進展を予防する目的で、抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療法です。注入は尿道からカテーテルを通して行います。BCG療法は上皮内癌(CIS)というタイプの膀胱癌にたいする治療にも用いられます。

【筋層浸潤性膀胱癌】

1)手術療法

転移のない筋層浸潤性膀胱癌では、膀胱を手術ですべて取り除く膀胱全摘除術はが標準治療となります。膀胱を切除した後は、尿路変向(変更)術を行い、尿を体の外に出す経路をつくります。膀胱の一部にのみ癌がある場合や膀胱全摘除術を希望されない場合は膀胱部分切除を行う場合もあります。

(1)膀胱全摘除術

男性では膀胱、前立腺、尿道を、女性では、膀胱、子宮、腟の一部、尿道を同時に摘出します。多くの場合、骨盤内のリンパ節摘除も行います。

(2)尿路変向(変更)術

膀胱を摘出した場合、尿を体外に出すための通り道をつくる尿路変向(変更)術が必要となります。尿路変向(変更)術には、回腸導管造設術、自排尿型新膀胱造設術、尿管皮膚ろう造設術などがあります。それぞれの方法に特徴があり、手術後は変更後の尿路を生涯使用することになるため、がんの位置や全身の状態、生活状況などを考慮して決めていきます。

・回腸導管造設術

小腸(回腸)の一部を切り離して左右の尿管とつなぎ、腹壁に固定して尿の出口とする方法で、広く行われている術式です(図1)。尿路を体外につなぐため、人工的に腹壁につくった排泄口のことを尿路ストーマ(ウロストミー)と呼びます。ストーマから断続的に尿が出るため、尿をためるためのストーマ装具(採尿袋)をつけます。

図1 回腸導管造設術

自排尿型新膀胱造設術

小腸または大腸を一部切りとってつなぎ合わせ、尿をためるための袋(新膀胱)をつくり、左右の尿管と尿道につなぐ方法です(図2)。ストーマをつくる必要がなく、尿道から尿が出せることが大きな特徴ですが、自力で排尿できない場合は間欠的導尿(時間を決めて尿道からカテーテルを用いて尿を排出する方法)が飛鳥となります。また、手術が複雑で時間がかかるため体への負担が大きく、残した尿道に癌が再発する危険性が高い場合には選択できません。

図2 自排尿型新膀胱造設術

(3)尿管皮膚ろう造設術

尿管を直接腹壁に固定して尿の出口とする方法です。左右の尿管を片側にまとめて1つのストーマにつなぐ一側性と、左右それぞれにストーマをつくる両側性とがあります。ストーマから断続的に尿が出るため、尿をためるためのストーマ装具をつける必要があります。手術の時間や入院期間が比較的短く、体への負担が少ないため、一般的には高齢者や合併症をもつ人に行われることの多い方法です。

2)薬物療法

(1)抗がん剤治療

進行していて切除が難しい場合や、転移がある場合の薬物療法としては、まず抗がん剤による治療が行われます。また、膀胱全摘除術の前や後に、手術の効果を高める目的で行うこともあります。 現在の第一選択はゲムシタビンとシスプラチンという抗がん剤を併用するGC療法です。腎機能に障害がある場合には、ゲムシタビンとカルボプラチンを併用するGCarbo療法を行うことがあります。また、膀胱全摘除術の前に、手術の効果を高めることを目的として、同じ治療を行うこともあります。

(1)免疫チェックポイント阻害薬

抗がん剤を用いた薬物療法の効果がなく、癌が再発したり進行したりした場合には、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬である免疫チェックポイント阻害薬の使用を検討します。免疫チェックポイント阻害薬を使う治療法は、免疫療法にも分類されます。

膀胱癌では、主にペムブロリズマブ(キイトルーダ)という薬剤を使用しますが近年、他の薬剤も出てきています。

3)放射線療法

膀胱を温存したい場合や膀胱全摘除術ができない場合に抗がん剤と放射線治療を組み合わせた治療を行う場合がありますが効果は限定的で治療可能な施設も今の所、限られています。

参考サイト

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