前立腺は、男性の膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り巻くように存在する小さな器官です。この器官は主に精液の一部分を生成する役割を担っています。前立腺癌は、特に高齢の男性に多く見られ、多くの場合、遅い速度で進行する特徴がありますが、急速に進行するタイプも存在します。
前立腺癌の原因とリスク因子
前立腺癌の正確な原因はまだ完全には理解されていませんが、いくつかのリスク因子が特定されています。
- 年齢:加齢により前立腺癌のリスクは高まります。特に65歳以上の男性に多く見られます。
- 家族歴:血縁に前立腺癌の患者がいる場合、リスクが高まります。
- 遺伝的要因:特定の遺伝子変異が関連している可能性があります。
前立腺癌の症状
初期の前立腺癌では通常、症状はほとんどありません。進行するに従い以下のような症状が現れます。
- 尿の流れが弱い、または中断する。
- 頻繁に尿意を感じる。
- 尿する際の痛みや不快感。
- 尿や精液に血液が混じる。
- 骨痛(骨に転移した場合)。
診断と治療
前立腺癌の診断には、まずPSA(前立腺特異抗原)という血液検査や直腸内指診が行われます。これらの検査で異常が疑われた場合、MRI検査が行われますが確定診断には針生検(前立腺に針を刺入し組織を採取する検査)が必要です。この結果、前立腺癌と診断された場合、CT検査やシンチグラム検査などにより癌の広がりを確認します。
前立腺癌の治療方法は、癌の進行度やグリソンスコアという悪性度、あるいは患者の年齢や健康状態によって異なります。治療選択肢には以下のようなものがあります
- 経過観察:非常に低リスクの癌の場合、直ちに治療を行わずに癌が進行しないか慎重に経過をみる方法です。
- 外科手術:転移のない前立腺癌に対する第一選択となります。最近ではロボットを用いた腹腔鏡手術が主流となっています。身体への負担が少なく合併症も減少するという利点があります。
- 放射線療法:外科手術と並んで転移のない前立腺癌治療の第一選択です。体外から放射線を照射する方法と前立腺内部から照射する方法があります。
- ホルモン療法:薬物により男性ホルモンを遮断することで癌の成長をおさえる方法です。多くの場合、内服薬と皮下注射を組み合わせて行います。
- 化学療法:進行した癌や再発した癌に使用されることがあります。
予防
前立腺癌の予防に関しては、健康的な生活習慣を維持することが一般的に推奨されます。定期的な運動、バランスの取れた食事、肥満の防止、禁煙などが有効とされています。また、PSA検診を受けることで前立腺癌を早期に発見することが可能になります。