食道がん
食道癌診断・治療ガイドラインに準じて治療を行なっています。
治療方法には、
- 手術治療
- 内視鏡治療
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 放射線治療 などがあります。
がんの進行度や患者さんの状態に応じて、治療法を決定します。当院では、奈良県立医科大学や奈良県総合医療センターと連携をとり、患者さんに適切な治療を提供できるようにしています。
食道がんの進行度 | N0 リンパ節 転移がない | N1 第1群への リンパ節転移 | N2 第2群への リンパ節転移 | N3 第3群への リンパ節転移 | N4 第4群への リンパ節転移 | M1 遠隔臓器への 転移 |
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T0, T1a 粘膜にとどまる | 0 | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳa | Ⅳb |
T1b 粘膜下層にとどまる | Ⅰ | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳa | Ⅳb |
T2 固有筋層にとどまる | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅳa | Ⅳb |
T3 外膜までひろがる | Ⅱ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅳa | Ⅳb |
T4a 食道周囲組織にひろがるが切除できる | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅳa | Ⅳb |
T4b 食道周囲組織にひろがり切除できない | Ⅳa | Ⅳa | Ⅳa | Ⅳa | Ⅳa | Ⅳb |
1)手術治療
進行度0〜III期の患者さんが対象となります。
病変(がん)部を含めた食道を切除するのと同時にリンパ節郭清(周囲のリンパ節を切除すること)を行います。切除すべき食道の範囲やリンパ節郭清の範囲は、がんの部位や進行度によって決定されます。胸部食道がんの場合には、比較的早期の段階でも広範囲にリンパ節転移を起こす可能性があるため、食道亜全摘術(胸部・腹部の食道全てと頸部の食道の一部を切除します)が行われることが多いです。よって、食道がんの手術では、胸、腹、首の操作が必要になります。
胸部食道がんの手術では、食道を切除するためには開胸(胸を開ける操作)が必要になります。食道は心臓、気管、気管支、肺などに囲まれ、骨の前にあり、通常は右の肋骨の間を分けて食道まで到達します(右開胸)。
従来、食道がんの治療では開胸手術、開腹手術が一般的でありました。最近では、胸腔鏡や腹腔鏡での手術を行なっています。術後の痛みの軽減、回復促進、肺炎発生の減少などの利点があります。高度の技術を要しますが、経験を積んだスタッフが行うことで安全に治療を受けていただけます。
食道がんの手術治療は非常に大きな手術であります。当院では、他診療科医師や看護師、理学療法士、言語聴覚士、薬剤師、栄養士など様々な職種のスタッフが密に連携することで安全な治療を提供できるよう心がけています。
2)内視鏡的治療
リンパ節転移のない早期のがん(0期)の患者さんが対象になります。
内視鏡(胃カメラ)を用いてがんを切除します(内視鏡的粘膜下層剥離術ESDなど)。切除後の組織検査の結果によっては、追加での治療が必要になる場合があります。
3)化学療法(抗がん剤治療)
肝臓や肺などの臓器に転移(遠隔転移)がある患者さんが対象となります。
また、手術治療の効果を高めるために手術の前や後に行うことがあります(補助化学療法)。放射線治療と同時に行うこともあります。数種類の薬剤を組み合わせた治療が行われることが多いです。
4)放射線治療
他の臓器にがんが浸潤していたり、持病のために手術治療が困難な患者さんが対象となります。化学療法を同時に行うこともあります。
食道裂孔ヘルニア
食道は、横隔膜の筋肉でできた食道裂孔とうい隙間を通って腹部に入ってきます。食道裂孔ヘルニアとはこの筋肉が脆弱になって、食道裂孔がひろくなり生じる病気です。胸のなかに胃や大腸などが脱出し、胸焼けや咳、のどの違和感、食欲低下、痛みなど様々な症状を引き起こします。薬物治療が主体になりますが、薬物治療に効果がない場合や胃が大きく脱出した場合、大腸が脱出した場合などには手術治療が必要となります。
手術治療では、ひろくなった食道裂孔を縫い合わせることと(縫縮術)、胃酸や胃の内容物が逆流することを防止するために噴門形成術を行うことが一般的です。当院では、食道裂孔ヘルニアの手術においても腹腔鏡手術を導入しています。