概要
脳の血管の壁が風船のようにふくらみ、コブとなったものを脳動脈瘤といいます。脳動脈瘤の多くは持っているだけであれば無症状ですが、ある日突然破裂することがあります。破裂すると脳の隙間にまんべんなく回り込むように出血が広がり、これをくも膜下出血といいます。くも膜下出血を起こすと、50%の方が亡くなるか高度障害となり、25%の方が後遺症を残し、社会復帰できるのは25%程度です。いったん破裂すると約半分は命に関わることになります。年間出血率は1%程度といわれており、残り99%の人は持っているだけで何ともありませんが、1%に入ってしまうと、致命的になることがあります。
症状
脳動脈瘤は脳の隙間にあるため、通常のサイズでは周りの構造物の症状を引き起こさないまま無症状で存在します。ただし、破裂すると以下のような症状が発生する可能性があります。
- 極端な頭痛: 突然の、非常に激しい頭痛が特徴的です。
- 吐き気と嘔吐: 頭痛とともに吐き気や嘔吐が起こることがあります。
- 意識障害: 出血により頭蓋の内圧が上昇し、意識がもうろうとしたり、昏睡状態になります。
- 視覚障害: 視野がかけたりやものが二重に見えたりすることがあります。
- けいれん: 体の一部または全体がけいれんすることがあります。
診断
- 画像診断: MRI、CT、脳血管造影などの画像診断技術が用いられます。
治療
破裂を防ぐ方法は現時点では手術のみしかありませんが、すべての動脈瘤が破裂する訳ではないので、必ず手術が必要という訳でもありません。
例えば、上記のように1%/年と仮定しても、若年で指摘されるほど生涯における破裂率は高くなるため、手術加療の困難さ、合併症の可能性を比べて、手術加療を勧めるケースが多くなります。一方で、高齢で見つかった場合は生涯における破裂率は高くなく、一方で、複数の病気を患っていることも多く、手術加療のリスクが高まるため、破裂予防の効果より合併症の可能性の方が高くなるため経過観察を勧めることが多くなります。専門医に相談して治療をすべきか相談して決めていただきます。
手術には2つの方法があります。一つは、開頭手術(クリッピング術)、もう一つは、血管内手術(カテーテル治療)です。
外科手術
従来の全身麻酔による開頭手術で、顕微鏡を用いて動脈瘤をクリップで閉鎖します。どのような形の動脈瘤にも対応でき、術中に万が一出血が起きた場合でも出血をコントロールして手術を行えるというのが長所です。当院では最新の顕微鏡をもちいて鮮明な画像の下、神経機能保護を目的とした術中神経モニタリングも併用して、精度が高く、安全性の高い治療を提供します。
血管内手術
手や足の動脈からカテーテルを頭部に誘導し、従来はコイルと呼ばれる軟らかい金属を動脈瘤内に挿入し、血流を遮断することで治療を行っていました。ステントと呼ばれるコイルを支える「足場」のような役割を持つ網状の構造物を留置して、塞栓を行う事もあります。また、近年はフローダイバーターステントが使用可能になり、動脈瘤内にコイルを留置せずとも動脈瘤への血流を徐々に減らし、最終的に塞栓状態に移行する治療も導入しました。クリッピング術と異なり、切らない手術のため、疼痛や侵襲(病変以外のほかの脳組織への影響の心配がない)が低いことや外科手術ではアクセス困難な後方循環や頭蓋底などの部位の動脈瘤の治療も比較的容易であることが長所であります。
経過観察・予防
- 血圧の管理: 高血圧は積極的に治療し、管理します。
- 健康的な生活習慣: 喫煙の禁止、適度な運動、バランスの取れた食事などが重要です。
- 定期的な健診: 高リスクの個人は定期的な脳の画像診断が推奨されることがあります。
脳動脈瘤は、特に破裂すると生命を脅かす重大な状態になるため、リスク要因の管理と定期的な画像チェックが重要です。画像で増大へ形に変化があれば治療を受けることが勧められます。