概要
水頭症(hydrocephalus)とは、脳・脊髄を取り巻き保護している脳脊髄液が頭蓋内に過剰に貯留する状態です。脳脊髄液の産生と吸収のバランスが崩れることや脳脊髄液の流れが途中でせき止められてしまうことにより水頭症が発生します。水頭症の原因としては頭蓋内出血や頭部外傷、髄膜炎に伴い生じるもの、先天的な奇形や脳腫瘍によるものなどがありますが、原因不明の特発性正常圧水頭症と呼ばれるものもあります。
黒い部分が脳脊髄液を貯留している部屋である脳室です。水頭症の頭部CTでは脳室が拡大しています。
症状
水頭症が急激に起こると頭蓋内の圧が高くなり、それに伴い頭痛・嘔吐・歩行障害・意識障害などが出現し、放置すれば呼吸が止まり、命にかかわる事態になることもあります。
正常圧水頭症などで水頭症が徐々に発生した場合、認知症・歩行障害・尿失禁などが主な症状になります。「治せる認知症」の1つとしても知られています。
診断
上記のような水頭症の症状があり、CTやMRIで脳室拡大等の特徴的な所見があれば水頭症と診断できます。診断のために髄液排除試験(タップテスト)を行い、症状改善の有無を確認することもあります。
治療
- シャント手術: 脳脊髄液を他の体部位へ導くための管(シャント)を挿入する手術で、過剰に貯留した脳脊髄液を腹腔や心房など頭蓋外の体腔に導き、そこで吸収させます。主に以下の3つの方法があります。
- V-Pシャント(脳室-腹腔シャント)
- L-Pシャント(腰部くも膜下腔-腹腔シャント)
- V-Aシャント(脳室-心房シャント)
V-Pシャント術後のCT(脳室内に白いシャントチューブがみえます)
髄液を流すシャントチューブの間にシャントバルブ(中央の図)を介在させることで、手術の後からでも皮膚の表面に機械を当てることで流れる髄液の量を調整することができます(右図)。
- 内視鏡下第三脳室底開窓術: 脳室系の閉塞が原因となる一部の水頭症に対して適応になります。神経内視鏡を用いて脳室とくも膜下腔を交通させ、脳脊髄液の詰まりを解除させます。
- ドレナージ術:過剰に貯留した髄液を体外に排出する方法です。局所麻酔でも施行できます。シャント術と違ってドレナージは永久的に留置できないため、一時的な処置となります。
予防と管理
水頭症の多くは予防が困難ですが、頭部外傷の予防、感染症への注意などが重要です。
水頭症の治療においては、手術を受けられた後も定期的な通院での経過観察が必要です。手術で圧可変式のシャントバルブが留置されている方には、必要に応じて術後もシャントバルブ圧の調整を行うことがあります。
水頭症は未治療の場合、症状の進行、場合によっては重篤で命に関わる状況を引き起こす可能性があります。早期診断と治療が重要です。