概要
外傷性頭蓋内出血は、頭部外傷によって脳内やその周囲の組織に血液が漏れる状態を指します。これは、交通事故、転倒、スポーツ中の衝突などによる直接的な頭部への打撃が原因で起こることが多いです。
外傷性頭蓋内出血の種類
- 硬膜下血腫: 脳と硬膜の間に血液が溜まる状態。外傷の直後に生じる急性硬膜下血腫と外傷の約2週間〜3ヶ月後に生じる慢性硬膜下血腫があります。
- 硬膜外血腫: 頭蓋骨と硬膜の間に血液が溜まる状態。通常は動脈性出血が原因です。
- 脳内出血: 脳組織内に直接血液が漏れる状態。脳の打撲や血管の損傷が原因です。
- くも膜下出血: くも膜と脳の間、脳表面のくも膜下腔に血液が溜まる状態。通常は脳動脈瘤の破裂などの脳の血管の病気によるものですが、外傷によっても起こることがあります。
主な症状
急な頭蓋内圧の上昇により頭痛、吐気、嘔吐などが起こります。重篤な場合には意識障害をきたし、昏睡に陥ることもあります。その他、出血の起こる場所によって、手足の麻痺、歩行障害、言語障害、視力・視野の障害などが起こることがあります。
外傷後約2週間〜3ヶ月後に生じる慢性硬膜下血腫の場合には、頭痛、認知機能障害、手足の麻痺、言語障害、尿失禁、などの症状が緩やかに進行して見つかる場合もあります。外傷による脳へのダメージが原因で外傷の直後もしくは時間が経ってから痙攣発作を起こすことがあります。
診断
- CTスキャン: 頭部CTは外傷性頭蓋内出血の診断に最も一般的に用いられます。
- MRI: CTで明らかにならない場合や、詳細な画像が必要な場合に行われます。
治療
- 保存的治療: 小規模な出血で、重篤な症状がない場合、密な監視と症状の管理が行われます。
- 手術治療: 頭蓋骨を大きく開けて血腫を取り除く開頭血腫除去術の他、頭蓋内の圧を減じるために内減圧術(脳の一部を切除する)、外減圧術(頭蓋骨を一部外したまま頭皮の創部を縫合して圧を外に逃す)、髄液ドレナージ、穿頭手術(慢性硬膜下血腫の場合の第一選択)、頭蓋内圧モニタリングのための頭蓋内圧(ICP)センサー留置術などが行われることがあります。
- リハビリテーション: 早期にリハビリテーションを開始し、継続することが重要です。
予防
- 頭部への外傷防止: ヘルメットの着用、安全なスポーツプラクティスの遵守など。
- 高齢者の転倒予防: 住居内の安全性向上、適切な運動による体力維持など。
外傷性頭蓋内出血は、特に高齢者や抗血栓薬を服用している患者においては深刻な結果を招くことがあります。したがって、頭部外傷後は、たとえ軽微なものであっても、医療機関での評価を受けることが非常に重要です。