糖尿病性腎症
糖尿病で高血糖の状態が長く持続することで、酸化ストレスなどから細い血管が破れたり詰まったりします。腎臓には糸球体という血液から不要なものを濾して尿の素を作るろ過装置があり、そこには小さな血管が豊富に存在します。その血管が糖尿病により破れたり詰まったりすることで腎機能が低下したものを糖尿病性腎症といいます。
糖尿病性腎症の初期にはほとんど自覚症状がありませんが、糖尿病罹患期間や血糖コントロールの状態に応じて次第に蛋白尿や腎機能低下が認められます。中には大量の蛋白尿が見られるためにひどくむくんだり、腎機能が急激に悪化して早期に腎代替療法が必要になることが多いです。また、糖尿病性腎症は透析導入の1番の原因となっていますが、血糖コントロールを行いつつ長期維持透析を行っている患者様も多くいらっしゃいます。糖尿病コントロール不良の状態が続くと心筋梗塞や脳卒中等の発症リスクが増加するため、透析導入後も諦めずに血糖管理を行っていくことが大切です。
糖尿病性腎症の進展予防には肥満の是正、禁煙に加えて血糖、血圧、脂質の改善が重要です。そのためには生活習慣の改善や継続的な通院加療が必要です。また、降圧薬や経口血糖降下薬の一部は腎機能の低下速度を軽減する効果が示されておりますので、蛋白尿陽性、むくみ、腎機能が悪い糖尿病成人症の患者様は早急に腎臓内科へ受診ください。
【出展】
- 日本腎臓学会
編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
東京医学社,東京,2023, 6. - 日本糖尿病学会
編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023.
文光堂, 東京, 2022, 4. - 日本糖尿病学会
編・著. 糖尿病専門医研修ガイドブック.
診断と治療社, 東京, 2022, 3. - Adler AL,et al. Kidney Int 63:225-232,2003