多発性嚢胞腎

染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は、下の図1のように両側腎臓に多数の囊胞が進行性に発生・増大し、腎臓以外の種々の臓器にも障害が生じる、遺伝性腎疾患のなかでは最も頻度の高い疾患で、2015年から難病指定されています。体が水分不足を感じたときに放出される、バソプレシンというホルモンにより嚢胞が作られることが分かっています。

超音波検査 腹部CT

図1:超音波検査 腹部CT

加齢とともに囊胞が両腎に増加し、進行性に腎機能が低下することで、60歳までに約半数が末期腎不全に至ります。

ADPKDは、腎機能低下の症状以外にもこの疾患特有の合併症があり、早期発見治療で生命予後を改善できる可能性があります。

基本の治療は血圧の管理や塩分制限、水分摂取ですが、嚢胞増大にかかわるバソプレシンの働きを抑制するトルバプタン(サムスカ)という薬剤の内服が腎機能低下を抑制することが報告され、両側の腎臓容積が計750ml以上または1年での容積の増大率が5%を超えている方に適応となります。

参考文献

  • 土谷健 他:多発性嚢腎の診断・治療の進歩.人間ドック32:444-455,2017.
  • 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編:日本エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020. 

検診やかかりつけの病院で腎嚢胞が指摘された際は、受診してください。

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