腎代替療法

腎機能障害が進行し、嘔気や食欲低下などの尿毒症症状や、息切れや下腿浮腫などの心不全症状がみられるようになると、腎臓の代わりが必要となり、腎代替療法といいます。
急性腎障害など感染症や薬剤により一時的に症状がみられた場合には途中で終了することもありますが、徐々に腎機能が低下した慢性腎障害では、一度腎代替療法を開始すると途中でやめることはできません。
腎代替療法には、血液透析・腹膜透析・腎移植があり、それぞれに長所と短所があります。
eGFRが30ml/min/1.73m2以下になった頃に、将来腎代替療法が必要となった際にどちらがよいかを相談します。

1.血液透析

血液透析は、血液を体外にとりだし、ダイアライザーという医療器具を通し、血液と透析液の間で物質の移動が起こり、老廃物と余分な水が除かれます。一般的には透析施設へ通院のうえ、1回の治療は3~5時間,週3回行います。全国で約30万人の患者さんが、約4000の施設で治療を受けています。血液透析を受ける準備として、血液を体外に取り出す血管(内シャント)を作っておく必要があります。
しかし、血液透析では完全には腎臓の機能を代行することができません。食事療法が必要で、降圧薬、リン吸着薬、貧血に対する薬剤などが多くの場合必要とされます。しかし、わが国では45年間にわたり透析を受けられている方もおられ、長期に腎機能の肩代わりが可能です。近年、老廃物の除去効果が高いオンライン血液透析濾過や、自宅に透析装置を設置し、自分で治療を行う在宅血液透析に注目が集まっています。

2.腹膜透析

腹膜透析(Peritoneal Dialysis:略称PD)は、自分の体の中の「腹膜」を利用して血液をきれいにする在宅で行う透析療法です。お腹にカテーテルを入れる比較的簡単な手術が必要となります。通常、月に1-2回の通院となります。1日に3、4回バックを用いて透析液を交換する方法(CAPD)と寝ている間に器械を使って自動的に行う方法(APD)があります。CAPDでは、1回のバック交換に約20-30分必要です。腹膜透析の最大のメリットは、血圧変動が少なく体への負担が少ない透析であることです。また、自由度の高い生活が可能で、社会復帰が容易となります。血液透析に比して残存腎機能・尿が長く保持され、尿量が維持されている間は水分摂取制限が少ないという利点もあります。こういった観点から、腎代替療法が必要になった場合には残腎機能を長く保つ腹膜透析から開始することが良いという『PD ファースト』が勧められています。

3.腎移植

腎移植は、腎臓のほぼすべての機能を補うことができますが、わが国では献腎移植は少なく、移植の順番がなかなか回ってこない(成人では待機期間は約15年)のが現状です。ご親族や配偶者に腎臓を提供していただける方がおられる場合は、生体腎移植は腎代替療法として検討すべきです。

透析療法の一カ月の医療費

腎移植の1か月の医療費

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