膵臓がんは、多くは膵管に発生し、そのほとんどは腺がんという組織型(がんの種類)です。膵臓がんは小さいうちから膵臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすく、おなかの中にがん細胞が散らばって広がる腹膜播種が起こることもあります。

症状

膵臓は、がんが発生しても小さいうちは症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません。進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る感じ)黄疸、腰や背中の痛みなどが起こります。その他、急に糖尿病が発症することや悪化することがあり、膵臓がんが見つかるきっかけになることもあります。ただし、これらの症状は膵臓がん以外の理由でも起こることがあります。また、膵臓がんであっても起こらないことがあります。

検査

腹痛や食欲不振などの何らかの症状、膵臓がんの危険因子となる疾患(糖尿病や慢性膵炎など)の有無や、血液検査、超音波検査の結果などから膵臓がんが疑われる場合には、造影CT検査、腹部MRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)を受けます。これらの検査によって診断が確定できなかった場合には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などを受けます。また、可能な限り細胞や組織を採取して、病理検査が行われます(図2)。
がんの進行の程度である病期(ステージ)を診断する検査では、必要に応じて、造影CT、造影MRI、EUS、PET、審査腹腔鏡が行われることがあります。

造影CT

X線を体の周囲から当てて、体の断面を画像にする検査です。がんの有無や広がりを見たり、リンパ節や他の臓器への転移の有無を確認したりするために行われます。膵臓がんでは、がんの位置や形を細かく映し出すために造影剤を使います。

MRCP

胆管や膵管の状態を詳しく調べる検査です。MRIを撮影し、コンピューターを使って胆道、膵管を画像にします。内視鏡や造影剤を使わずに、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)と同様の画像を作ることができます。体への負担が少ないので、ERCPの代用として行われることが多くなっています。

病理診断

がんかどうか、どのような種類のがんかについての診断を確定するための検査です。超音波内視鏡検査(EUS)を使った超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)や、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を使った膵液細胞診検査などで採取された組織や細胞を、顕微鏡を使って診断します。

PET

放射性フッ素を付加したブドウ糖(FDG)を注射し、がん細胞など細胞分裂が盛んな部位に取り込まれるブドウ糖の分布を画像にする検査です。膵臓がんが疑われている状態で、膵臓がんかどうかをより詳しく調べる目的で実施する検査としては勧められていません。膵臓がんの診断が確定し、他の臓器への転移などについて確認する目的などで行われることがあります。

治療


治療法は、がんの進行の程度に基づいた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。図3は、膵臓がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

膵臓がんではまず、手術ができるかどうかについて検討し、「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」のどの状態であるかを調べます(図3)。手術ができる場合は、手術のみ、もしくは手術と薬物療法を組み合わせた治療を行います。
がんが膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移していたりして手術ができない場合は、薬物療法や化学放射線療法を行います。また、痛みや食欲の低下といった症状に応じ、支持・緩和療法を行います。

(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

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