大腸がんは、大腸の粘膜(内側の表面)に発生します。 通常、早期がんでは症状はありません。進行すると血便や便通異常(便秘や下痢)、 腹痛などの症状を起こすようになります。
検査
大腸内視鏡検査で病変の組織を採って(生検)、顕微鏡で確定診断します(病理組織検査)。その後、CTなどの画像検査を行い、病状の進行度(病期:ステージ)を判定します。
癌の広がり具合(進行度)をステージ(病期)で表します。
ステージは,癌が大腸の壁に入り込んだ深さ(深達度),どのリンパ節までいくつの転移があるか(リンパ節転移の程度),肝臓や肺など大腸以外の臓器や腹膜への転移(遠隔転移)の有無によって決まります(表1)。
出典:認定NPO法人キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい大腸がんのこと2022年版」
ステージ0が最も進行度が低く,ステージIVが最も進行度が高い状態です。
治療方針を立てる上で,治療前にステージを正確に予測することが重要です。
ステージ分類には,治療前にCTなどの画像診断で予測する臨床分類ステージと,切除された大腸などの組織を顕微鏡で調べた結果をあわせて判断する病理分類ステージがあります。手術前に補助療法が施行された場合などには,治療前後でステージがかわることもあります。
出典:認定NPO法人キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい大腸がんのこと2022年版」
治療
外科、放射線科と相談のうえ、ステージにあった治療方針を立てます。
内視鏡治療の適応であれば内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)を行います
<出典:国立がん研究センターがん情報サービス>
感染性腸炎
・感染性腸炎は病原微生物がヒトの腸管内に侵入、定着、増殖して発症する疾患であり、ほとんどの場合に下痢がみられます。病原体には細菌、ウイルス、寄生虫などがあります。
・細菌・ウイルスによる感染性腸炎は増殖する腸管の部位により、小腸型と大腸型に大きく分類され、罹患部位により潜伏期、症状などがある程度規定されます(後述)。
・多くは食品や汚染された水による感染(食中毒)ですが、ペットやヒトからの接触感染もみられます。
・一般的には、夏季には細菌性腸炎が、冬から春にかけてはウイルス性腸炎が多く発生します。
・寄生虫による感染性腸炎では下痢がみられないことがあります。
食中毒
・食中毒は、食品などに含まれた病原微生物、化学物質、自然毒などを摂取することによって発症する疾患です。
・食中毒は、一般的に同一の食品によって複数の患者が集団発生した場合を指します。
・食中毒が疑われた時点で保健所に届出を行いますが、結果的に病原体が検出された場合に 食中毒として集計されます。
・食中毒の原因となる微生物は多くは細菌です。細菌による食中毒は感染型と毒素型に分類できます。病態的にみれば感染型食中毒と感染性腸炎は同一です。一方、毒素型食中毒は産生された毒素を含む食品による中毒であり、厳密には感染性腸炎とは言えません。
病型分類
1)小腸型
- 主な罹患部位は上部小腸であり、そのため潜伏期は大腸型に比較して短いです。
- 小腸型の原因微生物は、ウイルスや毒素型(生体外毒素産生型)や毒素産生型(生体内毒素産生型)の細菌です。
- 小腸型は微生物や毒素による腸管からの分泌亢進であり、組織の破壊を伴わないため、水様性下痢と悪心・嘔吐が主な症状です。
①急性胃腸炎型(悪心・嘔吐が強い)
- 原因はウイルスと毒素型の細菌です。
- 毒素型の細菌には黄色ブドウ球菌、セレウス菌(嘔吐型)などがあります。人体に入る前に既に産生されていた毒素が症状を引き起こします。そのため、潜伏期は1~6時間と短いです。主な症状は悪心・嘔吐であり、下痢はあっても軽く、発熱はみられません。
- ウイルスは、ノロウイルスやロタウイルスが代表的です。
- ノロウイルスの潜伏期は12時間~2日です。主に上部小腸の上皮細胞に感染し、感染細胞は最終的にはアポトーシスなどで死滅するが、大きな粘膜傷害は起こりません。悪心・嘔吐と水様性下痢を来します。
- ノロウイルスでは発熱はないか軽度ですが、ロタウイルスは発熱がみられます。
②急性腸炎型(水様性下痢が主)
- 原因は毒素産生型の細菌でありコレラ菌、腸管毒素原性大腸菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ、セレウス菌(下痢型)などがあります。
- 細菌の増殖に伴い産生された毒素が症状を引き起こしますが、潜伏期は毒素型に比べてやや長く、1日以内のことが多いです。悪心・嘔吐はないか、あっても軽度であり、水様性下痢が主な症状です。発熱は原則みられません。
- 腸管上皮細胞に定着、増殖する際に細胞傷害や機能障害を来す毒素を産生することで発症します。菌が粘膜に侵入することがないため、粘膜傷害は軽度で潰瘍は生じません
2)大腸型
- 罹患部位は大腸または下部小腸であり、潜伏期は比較的長いです。
- 大腸型の感染を生じる原因微生物は、カンピロバクター、サルモネラ、赤痢菌、腸管出血性大腸菌、C. difficile(Clostridioides difficile)、赤痢アメーバなどです。
- 大腸型は微生物や毒素による組織侵襲が基本的な病態のため、発熱や腹痛を伴い、血便や粘液便やテネスムスなどを生じます。
カンピロバクターやサルモネラは粘膜侵入型の細菌であり、腸管上皮細胞に定着後侵入し増殖します。上皮細胞を破壊し腸の潰瘍やびらんを来すことがあります。一方、腸管出血性大腸菌やC. difficileは、強力な毒素を産生することにより粘膜傷害を来します。
3)穿通型
- 主な罹患部位は回盲部です。
- 穿孔型の原因微生物はエルシニア、腸チフス菌、パラチフス菌などです。
- 消化器症状よりも発熱、菌血症などの全身症状が全面に出るため、穿通型と呼ばれます。発熱、腹痛が主な症状であり、下痢はみられないことがあります。
- 腸管リンパ装置を介して侵入、増殖し、リンパ装置の腫大やびらんを引き起こし、時に深い潰瘍を形成する場合があります。
症状
・感染性腸炎は下痢、発熱、腹痛、悪心、嘔吐などの急性胃腸炎症状がみられることが多いです。とくに下痢はほぼ必発であり、他の症状は疾患により少し異なります。
・血便をきたす感染性腸炎はほとんどが細菌性腸炎であり、内視鏡検査が行われた場合は非感染性腸炎との鑑別が問題になります。血便の頻度が高いのは腸管出血性大腸菌腸炎とアメーバ性大腸炎であり、半数以上が血便を伴います。次いでカンピロバクター腸炎とサルモネラ腸炎が多く22~23%です。
・高熱を伴う激しい水様便の場合には、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、ロタウイルス腸炎などを考えます。
・腸管出血性大腸菌腸炎では、発熱は軽度かみられません。また、腹痛は激しいことがあり、虫垂炎と間違われることがあります。
・エルシニア腸炎は、腹痛と発熱が主な症状で、下痢は軽度かみられません。腹痛は激しいことが多く虫垂炎と間違われることも多いです。
・チフス・パラチフスは発熱が主な症状であり、下痢は必ずしもみられません。
・ノロウイルス腸炎は、嘔吐と下痢が多く、発熱はないかあっても軽度です。
・ロタウイルス腸炎は乳幼児に多く、発熱、下痢、嘔吐などがみられます。白色便が特徴です。
診断
・診断には詳しい問診が重要であり、症状とその発現時期、食歴、周囲のヒトの様子、最近の旅行歴(特に発展途上国)、最近の抗菌薬使用歴、基礎疾患の有無などを聞きます。
・細菌性腸炎の確定診断は便や腸液を培養して検出します。結果がわかるまで2-3日必要です。培養の陽性率はあまり高くないため、培養が陰性でも感染性腸炎は否定できません。
・ウイルス性腸炎の確定診断は、吐物や便からウイルスに特異的な物質や遺伝子の検出によります。
治療
・感染性腸炎は、一般的には自然治癒傾向が強いため、治療の原則は対症療法であり、抗菌薬は必要ないことが多いです。下痢に伴う脱水には点滴による輸液を行います。
・下痢止めや鎮痙薬は、腸管内容物の停滞時間を延長し、毒素の吸収を助長する可能性があり原則的には使用しません。整腸剤や乳酸菌製剤は腸内細菌叢を回復させるために投与します。
・赤痢、コレラ、チフス・パラチフスなどの3類感染症では、抗菌薬投与は必須です。二次感染予防や排菌期間の短縮のために投与を行います。
・腸炎ビブリオ腸炎、ブドウ球菌腸炎、エロモナス腸炎などの毒素により症状が出る腸炎では、原則抗菌薬は不必要です。
・カンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎、腸管出血性大腸菌腸炎などでは、患者の状態で抗菌薬を投与するかどうかを決めます。
・原因菌が不明な場合の抗菌薬の適応は、症状が重症(38℃以上の発熱、10回以上の下痢、血便などで判断)あるいは菌血症が疑われるもの、1歳未満、高齢者、細胞性免疫不全患者、人工弁置換・人工関節・人工血管を入れている患者、渡航者下痢症などです。
主な感染性腸炎
1)ノロウイルス腸炎
・ノロウイルスは、冬季を中心に多発する散発性感染性胃腸炎、集団発生胃腸炎および食中毒の主な原因ウイルスです。感染性胃腸炎で最も多く、冬季に毎年流行します。
・2006年度には大流行があり、食中毒の事件数(513件)、患者数(30852人)および1事件あたりの患者数(60人)とも最高を記録しました。ほとんどで調理従事者などが汚染源でした。
・毎年冬季には流行がみられ、食中毒統計では毎年1万人を超えることが多く、最も多い食中毒の原因です。 また、ヒトーヒト感染も多く、多くの場合ウイルスの検査をしないため、実際には数百万人の感染があると推定されます。
・悪心・嘔吐、下痢が主症状ですが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、などもみられます。
・特別な治療は必要とせず自然によくなることが多いですが、乳幼児や高齢者及び体力の弱っている者では、下痢による脱水や嘔吐物による窒息に注意する必要があります。
・潜伏期間は12時間~2日です。ウイルスは症状が消失した後も約1週間(長い時には約1ヶ月)患者の便中に排泄されるため、二次感染に注意が必要です。
・飲食物を介して感染する場合と、患者との接触によりヒトーヒト感染する場合があります。カキなどの二枚貝を生や過熱不十分な状態で食べることが、飲食物を介した感染の主な原因です。ヒトーヒト感染では、調理従事者を介した感染や学校・家庭などでの接触感染が多いです。
・感染者の糞便には、1gあたり数億個のウイルスが含まれます。また、ノロウイルスは感染力が強く、10-100個の極微量のウイルスを摂取することで感染が成立します。
・ウイルスを不活性化するには、85℃・1分間以上の加熱及びに次亜塩素酸ナトリウムが有効です。
・感染防止策として、手洗いの励行とウイルスを含む汚染物の処理が重要です。汚染物(嘔吐物、便)の処理には洗剤ではなく次亜塩素酸ナトリウムを用います。
2)ロタウイルス腸炎とロタウイルスワクチン
・ロタウイルスは、冬から春にかけて流行する乳幼児嘔吐下痢症の代表的なウイルスであり、重症胃腸炎の主な原因です。
・5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれており、5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因とされています。
・6か月~2歳の乳幼児に好発し、発展途上国の乳児死亡の主要な原因です。
・年長児や成人は無症状化軽症に経過します。
・感染経路は糞口感染でヒトーヒト感染します。
・潜伏期は2~3日で、発熱、腹痛、嘔吐などを伴う激しい下痢を生じ、約1週間持続します。下痢は水様で、時に白色化します。
・症状は重いことが多く、高度の脱水におちいりやすいです。
・まれに、痙攣などの神経症状や腸重積や肝障害を示すことがあります。
・特異的な抗ウイルス薬はないため、治療は脱水を防ぐための輸液が主なものです。
・我が国では2011年からロタウイルスワクチンの2種類が承認されており、最初は任意接種でしたが、2020年10月からは定期接種になっています。
・口から飲む生ワクチンで、生後6週から24週までの間に2回受けるタイプと、生後6週から32週までの間に3回受けるタイプの2種類があります。
・生後14週6日までの初回の接種が推奨されています。
・接種後1~2週間は腸重積に注意する必要があります。
・ワクチンは胃腸炎の重症化を予防する効果があり、入院患者を約70~90%減らすことができたとの報告があります。
3)カンピロバクター腸炎
・カンピロバクターは、夏季を中心に多発する散発性感染性胃腸炎、胃腸炎集団発生および食中毒の主要な原因細菌です。
・食中毒統計では、毎年2000-3000人発生しており、細菌性腸炎のなかで最も多いです。しかし、実際には年間数百万人程度の患者がいると推定されています。軽症も多いこと、菌を検査しないことが多いことなどがその解離の理由です。
・下痢、腹痛、発熱が主な症状ですが、悪心、頭痛などもみられる。かぜやインフルエンザと間違われることもあります。
・有熱患者の平均体温は38℃代と高いが、発熱は一過性であり1-2日で解熱することが多いです。
・血便も比較的多くみられますが、この場合潰瘍性大腸炎などの非感染性腸炎との鑑別が必要です。
・通常は特別な治療は必要なく、2-3日で軽快することが多いです。乳幼児、高齢者および体力の弱っている者では抗菌薬投与が必要なことがあります。
・潜伏期は2-8日と比較的長く、患者自身が食中毒と気づかないことが多いです。
・感染源は鶏肉とその加工品、生レバーなどが多いですが、牛や豚もみられます。食肉の過熱不足や調理過程でまな板や手指を介しての二次感染もみられます。
・感染防止には鶏肉を生で食べないことが最も重要です。
・感染数週間後に、手足のしびれや麻痺が起こるギランバレー症候群を発症することがあります。
4)腸管出血性大腸菌腸炎(O157腸炎)
・ベロ毒素を出して、出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす大腸菌を腸管出血性大腸菌と呼びます。O157は、この腸管出血性大腸菌の代表的な細菌ですがO26、O121、O111などもみられます。
・ベロ毒素は強力で、とくに腎臓、脳、血管などに障害を起こします。ごくわずかな量で、実験に使われる培養細胞のベロ細胞を殺してしまうことからベロ毒素と名付けられました。
・ベロ毒素はベロ毒素レセプターを発現している細胞に障害を与えます。すなわち大腸上皮細胞では出血性腸炎を、腎臓・尿管の血管内皮細胞ではHUSを、脳の血管内皮細胞では脳症を引き起こします。
・1996年5月に、岡山県邑久の小学校で学校給食によるO157腸炎の集団発生が起こり、468人が発症しHUSで2人の死者が出ました。1996年7月に大阪府堺市で学校給食による大規模な集団発生が起こり、5725人が発症、805人が入院、108人がHUSになりました。1996年は全国で9451人が発症し死者は12人に及びました。これらの事件をきっかけに、学校給食の衛生管理が徹底されるようになりました。
・その後集団事例は減り散発事例は続いていますが、2011年の生レバー禁止で減少効果がみられています。
・腸管出血性大腸菌は牛、豚などの大腸に生息しています。糞便や糞便で汚染された水や食物を介して、ヒトの口に入り感染を起こします。感染力が強く、感染したヒトからヒトへも感染します。
・腸管出血性大腸菌は、わずか数個-数十個という少量の菌が口に入っただけで発症します。そのため非常に感染力が強いと言えます。胃酸に強いため、ほとんどが死滅せずに腸に移動することが理由の1つです。ちなみに他の食中毒菌の場合、100万-1000万単位の病原菌が口に入ると発症します。
・感染後3-8日で激しい腹痛、水様性下痢で発症し、翌日には血便を起こすのが典型的症状です。典型例では便成分がない血性下痢となります。
・年齢別の発症は0-4歳が最も多いです。次いで5-9歳が多いです。同じ物を食べても免疫能の弱い乳幼児のみが発症することが多いと考えられます。
・乳幼児や高齢者では抵抗力が弱いため重症化することがあり、HUSや脳症(けいれん、意識障害)をおこしやすいです。特に乳幼児には生の肉・内臓を食べさせないように注意します。
・予防のためには、焼肉を食べる場合にはしっかり加熱(中心温度75℃以上で1分間以上)し、焼く箸と食べる箸を使い分けることが重要です。手指の手洗いも重要です。
5)サルモネラ腸炎
・1990年代後半までは腸炎ビブリオとともに猛威をふるっていたが、国の種々の対策が功を奏し2000年代に入ると減少しました。それでも細菌性腸炎の食中毒の中ではカンピロバクター腸炎、ウェルシュ菌腸炎に次いで多いです。
・下痢、腹痛、発熱、悪心が主な症状であり、血便をきたすことがあります。
・有熱患者の平均体温は38.7℃と高く、自然に解熱することが多いが遷延することもあります。
・菌が腸粘膜深くまで侵入するため、細菌性腸炎の中では最も重症であり、小児や高齢者では合併症(菌血症、腎不全、髄膜炎、骨髄炎など)のために死亡することがあります。
・通常は特別な治療は必要ありませんが、小児や高齢者、免疫不全のある患者、菌血症などの合併症を起こした患者、人工臓器を入れている患者などでは抗菌薬の投与が必要です。
・潜伏期は8-48時間と短く、患者自身が食中毒と気づくことが多いです。
・感染源は鶏卵と卵調理品が多いですが、牛肉や豚肉、ペット(犬、カメ)からの感染もみられます。
6)アニサキス症
・アニサキス症は、中間宿主のサバ、イカなどを生食することで経口感染し発症するアニサキス幼虫移行症です。人体では長期に生きられず3~4日で死滅しますが、胃や腸の壁に刺入し、激しい痛みを来します。
・罹患部位により、胃アニサキス症と腸アニサキス症に分類され、胃が最も多く93%、小腸2.7%、大腸0.3%の頻度です。
・大部分を占める胃アニサキス症は摂食後約2~8時間以内に発症し、周期性の激しい心窩部痛を来し、悪心・嘔吐を約半数に認めます。
・イカやサバやアジなどの魚介類の生食の既往があり、激しい腹痛や嘔吐があれば胃アニサキス症を疑います。
・病歴と症状で胃アニサキス症を疑えば、上部内視鏡検査を施行し、胃壁に刺入したアニサキスを発見することで診断できます。そのまま虫体を取り除けば速やかに症状は消失します。
・アニサキス症が原因でアナフィラキシーショックや蕁麻疹を来す場合があり、注意が必要です。
・小腸アニサキス症は、摂取数時間~数日後に腹痛および悪心・嘔吐や腹部膨満感などの腸閉塞症状を示すことが多いです。
7)クドア
・それまで原因不明の食中毒であったが、2011年に本邦でヒラメに寄生するクドアセプテンプンクタが初めて発見され、新たな食中毒として認定されました。
・クドアは原虫の粘液胞子虫に属し、ヒラメ(特に養殖)やカンパチやマグロなどに寄生しています。
・食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し、軽症で終わります。
<出典:大腸肛門病学会ホームページ 2024年6月