当センターの感染対策
感染対策室は、患者さんをはじめ、ご家族、職員など病院を出入りするすべての人々を院内感染から守るため、医師、感染管理認定看護師( Infection Control Nurse:ICN)、薬剤師、臨床検査技師をはじめとする多職種で構成された感染対策チーム(Infection Control Team: ICT)で活動しています。また、抗菌薬の不適切な使用や長期間の投与が、薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)をもった微生物を発生あるいは蔓延させる原因となりうるため、ICNと感染症内科医師を含めた多職種での抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)で患者さんへの抗菌薬の使用を適切に支援するため、検査や抗菌薬のアドバイスを行っています。2021年より感染症内科医が常勤となり、発熱時の血液や尿などの培養検査の結果より患者さんの状態に合わせた正しい抗菌薬治療がより早期から対応できるようになりました。また、2023年4月より感染制御認定薬剤師が専従となり、抗菌薬適正使用に対してより強力な体制となりました。
2020年3月よりCOVID-19対策にも取り組み、3年経過しました。地域の先生方にも協力していただき、発熱外来認定医療機関や入院の受け入れ病院も増えていきました。昨年度より、5類への移行に伴い、院内感染の予防と、病院での感染対策の変更に取り組んでいます。
ICTの活動内容
①COVID-19の感染対策
国の体制や流行状況に応じた感染対策のマニュアルや臨床現場での対策の変更と指導
COVID-19 病棟や一般病棟のラウンド、ワーキングの開催、感染対策の物品購入や使用方法を検討 研修会の実施と指導
院内のクラスターや COVID-19 の接触者等の対応、院外の施設への指導
②院内ラウンド(1 回/週)
滅菌物管理、水回りや廃棄の管理、COVID-19 対策
③医療関連感染サーベイランス
検査部門サーベイランス報告(JANIS)
中心静脈カテーテル(CV)関連血流感染のデータの集積と分析
看護部感染防止委員会での中心静脈カテーテルの管理指導
④職員に対する感染対策・教育
研修会の実施:COVID-19 感染対策と治療、抗菌薬治療
委託職員への感染防止教育 地域の医療機関対象の研修会開催
⑤ 感染に関する最新情報の分析
耐性菌による感染症や結核、インフルエンザなど県内の流行状況の確認
AST の活動内容
① 血液培養陽性確認時に感染症内科医師による助言
② ラウンド(1 回/週)
血液培養陽性患者:感染症内科医師、ICD(感染症コントロール医師)、ICN、薬剤師、細菌室臨床検査技師と共に、患者状態をカルテ上で把握し、血液培養で出された細菌名や感受性を確認し、患者の抗菌薬や適量、投与方法を検討します。また、主治医とも相談し治療方針に合わせて抗菌薬治療を選択します。
抗菌薬長期使用患者:広域抗菌薬が 10 日以上投与されている場合に患者状況を把握し、主治医に相談し、抗菌薬の変更や投与量、投与期間などを助言します。
③ 当センターのグラム陰性桿菌、グラム陽性球菌の検出状況から 1 年ごとに感受性率を作成・提示
当センターのグラム陰性桿菌、グラム陽性球菌の検出状況から 1 年ごとに
感受性率を作成し提示しています。
そこから、抗菌薬の耐性の状況を把握し抗菌薬を使用する場合の参考となるように医師に提示しています。
地域連携
① 感染対策加算1の施設との相互評価
病院間で施設基準表による感染対策のチェック
COVID-19 の治療や感染対策の相談
② 合同カンファレンス等
感染対策向上加算 2・3 の施設、外来感染対策加算のクリニックとの連携で合同カンファレンスを 4回/年、施設への指導を目的として開催しています。2022 年度より地域のクリニックにも参加いただき、新興感染症に対する個人防護具の着脱方法の指導や COVID-19 の治療や対策の情報共有、抗菌薬使用量調査、抗菌薬使用の相談等を行っています。また、施設訪問し、感染対策指導を実施し、クリニックからや老健施設などの相談にも対応しています。
地域連携合同カンファレンス
感染対策のアドバイス(ICN)
抗菌薬使用のアドバイス(薬剤師)
活動実績
2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | 2023 年度 | |
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MRSA 感染率 | 1.14 ‰ | 0.34 ‰ | 0.50‰ | 1.40% |
CV 感染率 | 3.25 ‰ | 3.02 ‰ | 3.75‰※1 | 2.54% |
血液培養 2 セット率 | 97.8 % | 95.6 % | 97.0% ※2 | 98.8% |
※1 感染率の上昇の原因はCV挿入の患者さんの高齢化、低栄養化が原因と考えています。
※2 抗菌薬開始前の血液培養は2セット採取が定着しています。
患者さんが安心して入院いただけるよう院内における感染対策に取り組むとともに、医療施設での感染対策指導など、地域の先生方とも協力し合って、地域の感染対策を高めていきたいと考えています。今後とも、ご指導、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。