今年の秋は、夏の厳しい暑さが長く続き、そして今、突如寒い冬がやって参りました。日本の四季も今までとは随分変わってしまったようにも思える毎日です。そのような季節の折り、登録医の先生方におかれましてもご健勝のこととお喜び申し上げます。

今回は、西和構想地域の不足病床についてお話し致します。
国が算出した必要病床数に対して、現在の西和医療圏の病床数が不足していたため、県が174床を新たに募集したことを受け、奈良友紘会病院等の3つの医療機関が増床計画を提出されています。この増床計画については、地域医療構想の会議のなかで議論されています。今後更に医師会や病院協会でも議論された後、医療審議会での審議を経て、知事の許可を得るという流れになるとお聞きしています。

この募集について、各地区医師会や県医師会の先生方から、なぜ西和医療センターが手を挙げないのかとの率直なご意見を頂いております。では何故、今回、手を挙げなかったのか、その理由について少し説明させてください。

まず、西和医療センターの運営状況ですが、令和5年度の新入院患者数は、コロナ前の令和元年度を凌駕するほど増加しています。しかしながら、この5年で入院期間の短縮が進み(平均在院日数13日台前半から10日台前半へ3日間短縮)、稼働病床数については令和元年度の実績に到達しておりません。コロナ禍の3年間に医師・看護師を含め職員を増員したことと、様々な経費(診療材料費、光熱費等々)が急激に増加したことで大幅な赤字経営に至っております。今年度は、昨年度より厳しい経営改善策を展開しており、物品購入に掛かる費用も細かく見直し、大型医療機器の購入においても厳選したもののみとし、病床稼働率を取り戻すべく、日々、職員全員が業務に邁進しております。しかしながら、今年度も赤字を計上する予測になっています。

令和6年度に入ってから今日までの平均病床稼働数は238床(79%)で、心血管系救急が増加する11月に至っても254床(85%)にとどまっています。そんな中、この不足病床の募集が行われました。新病院設立を前提として病床数を300床から350床程度にすることで、(稼働率を順調に保つことができればの場合)経営状況の改善が期待できる為、現場としましては、増床しておきたかったところではありますが、稼働率が85%程度のままでは、この募集に手を挙げることができなかったということです。

さて、延期されていた新西和医療センターの基本構想計画会議の第1回目が、この冬にようやく開かれると聞いております。経営状態の赤字を理由に、規模を縮小しての新病院設立が計画、立案されることになれば、地域住民の皆さまにとっても大きな問題となりかねません。当院は、現在の耐震基準を満たしていない建造物である為、一日も早い新病院としてのスタートが必要です。これらのことから、厳しい基本計画が進むことが予測されます。しかし、このような状況にあっても、職員達は皆、日々それぞれの業務に励んでくれており、稼働病床数は徐々に上昇しています(先週の稼働最高値は291床まで改善)。今はこの難局を乗り超えて、西和医療圏の基幹病院として新西和医療センターが設立されることを心から願い、日々努力しております。院長としましては、地域の登録医の先生方から信頼していただける病院づくりを進めておりますが、今後もこの観点での病院づくりに邁進して参ります。

西和医療センターの訪問チームが先生方の診療所を訪問しました折りには、是非とも、先生方からの忌憚のない率直なご意見をよろしくお願い申し上げます。

また、今回の年末年始は9連休になっており、先生方の患者さんのなかには、この休み中に容体が悪化することが予測される方もいらっしゃるかもしれません。ご心配なケースは年末の間に、当院にご紹介いただき、必要であれば入院診療を早めに行うことも可能ですので、是非、ご相談ください。

西和医療圏及びその南側・南東側(香芝市・広陵町等の周辺地域)から来ていただいている多くの患者の皆さまが将来においても、安心して暮らすことができる地域にする為に、西和医療センターがしっかりしなければならないと考えています。今後とも先生方のご支援をお願い申し上げます。

令和6年12月吉日

奈良県西和医療センター院長 土肥 直文

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