この度の石川県能登地方を震源とする地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。令和6年1月1日16時10分頃に発生した石川県能登地方を震源とする最大震度7を記録した地震において、奈良県西和医療センターDMATチーム(以下、西和DMAT)が現地でDMAT活動したので報告させていただきます。
まず、DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは大地震等の災害時に被災者の生命を守るため、被災地に迅速に駆けつけ、災害医療を行うための専門的な訓練を受けた医療チームです。DMATは被災地域における医療で困っている全てのことをチームとして活動します。具体的には被災現場・避難所での医療、被災地域病院の病院支援、医療搬送、医療情報管理などです。
発生当初は中部ブロック(富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、山梨県)に所属するDMATが派遣され、能登半島の被害が大きく、被災地内での医療が困難であることが確認されたため、1月3日14時36分に二次隊として奈良県他4府県のDMATに派遣要請がありました。
この要請を受けてチーム編成を行い、医師1名、看護師2名、業務調整員1名でチームを組織し、翌日の1月4日朝9時30分に西和医療センターを出発しました。現場到着後に災害医療を行う内容を指示されるので、医療器具並びに、被災地での飲食は自己完結できるように各自の食料を持参していきました。
集合場所である石川県立中央病院に到着後、奈良・京都のDMATの活動は医療搬送支援を行うことが指示されました。この医療搬送とは、被災現場からの医療が必要な被災者の搬送を行うことです。災害地域の病院で医療資源・人員がパンクしていれば、傷病者を被災地域から離れた病院に搬送することで、被災病院の負担軽減となります。
能登半島の病院はパンク状態であり、さらに道路が寸断されている状態であったため、救急車以外に自衛隊ヘリなどで傷病者を搬送し、金沢市内にある石川県立中央病院にまず集め、そこから周辺地域の病院に搬送するまでの業務を行いました。この業務は、搬送の連絡受付、搬送手段の調整、トリアージと診療、搬送先調整、搬送を各DMATがそれぞれチームとして行動します。
石川県立中央病院内に災害拠点(図3)と搬送拠点としてのMCC(Medical Check Center)を立ち上げ、院内の救急医と協力して搬送患者の初療を行い(図1・2)、院内に一時収容もしくは周辺医療機関に転院調整を行う体制としました。
日勤帯は上記活動を行い、外傷、高血圧・糖尿病などの持病の悪化、感染症、肺塞栓など、軽症から重症までの色々な搬送患者さんがつぎつぎ搬送され、その対応をおこないました。搬送患者さんの中に、糖尿病の重症合併症である糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんが多く搬送されてきました。普段は稀な疾患ではありますが、地震で持病の薬がなくなり、栄養不足が重なり、災害が引き起こした重症疾患であります。夜勤帯は院内の救急医・看護師の負担軽減のため、同院緊急救命室のサポートを行いました。西和DMATは上記活動を終えて、次のDMAT隊に引き継ぎを行ってから1月7日14時に西和医療センターに帰院しました。
私たちは今回石川県でDMAT活動を行いましたが、DMAT活動は現場派遣で成り立つものではなく、病院全体の協力を得て成り立ちます。他のDMAT隊員は県と現場の橋渡しとして後方支援、病院の方々は私たちが抜けた分の院内業務の調整と活動準備をしていただき、略儀ながらこの報告書にて感謝申し上げます。能登半島の被災地は現在も疲弊されている状況であり、今回の活動を通じてふれた患者さんやその家族の皆様の不安や悲しみを忘れず、今後も発生すると想定される災害に備えて研修・訓練を継続していきたいと思います。
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図1
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図3
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図1・2 Medical Check Center 搬送患者さんの対応
図3 石川県立中央病院内にある災害拠点本部
図4 西和医療センター 出迎えていただきました