脳神経外科 
-疾患・治療-

診療内容

脳神経外科では、脳や脊髄疾患に対する外科治療を中心に行います。
的確な外科治療を行うためには的確な診断が必要となります。当科では、各領域の専門医を中心に、超音波、CT、MRI、血管撮影などを駆使し診断を行います。

 

 

■ 脳卒中、頭部外傷など脳神経外科緊急疾患に対する治療

脳神経外科専門医の資格を持つスタッフが常時オンコール体制で待機し、脳神経外科的治療が必要な疾患に対しては手術治療も含め迅速に対応します。

 

■ 脳卒中に対する外科治療

  1. くも膜下出血:生命の危機に瀕する重症疾患であり原則的に急性期外科治療を行っています。原則的に最も根治性の高い開頭クリッピング術を行いますが、病態に応じて、血管内治療専門医による血管内治療(コイリング)も行っています。また、くも膜下出血を発症する前に判明した未破裂脳動脈瘤に対しても積極的に外科治療を行っています。
  2. 脳内出血:病態に応じて積極的に開頭血腫除去術を行っています。
  3. 脳梗塞:脳梗塞発症超急性期において主幹動脈閉塞に対して積極的に血栓溶解剤静脈投与、血栓回収術を行っており、再発予防治療として、バイパス手術や頸部内頚動脈血栓内膜剥離術(CEA)を行っています。病態に応じて、血管内治療専門医による頸動脈ステント留置術(CAS)も行います。

 

■ 脳腫瘍に対する集学的治療

必要に応じて奈良県立医科大学、奈良県総合医療センターと連携し、外科的治療・放射線治療・化学療法などの集学的治療を行います。

 

■ 機能的疾患に対する外科治療

顔面けいれん、三叉神経痛に対して、外科治療を行います。

 

■ 頚椎・脊髄外科疾患に対する外科治療

脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍に対して、脊髄外科専門医とともに病態に応じて積極的に外科治療を行います。

 

 

対象疾患

■ 脳血管障害(脳卒中)

脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、もやもや病、海綿状血管腫、頚動脈海綿静脈洞瘻 など

 

■ 脳腫瘍

神経膠腫、髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腺腫、松果体腫瘍、転移性脳腫瘍 など

 

■ 頭部外傷

慢性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折、急性硬膜外出血、急性硬膜下出血、髄液漏、気脳症、びまん性軸索損傷 など

 

■ 機能的脳神経外科

三叉神経痛、顔面けいれん など

 

■ 脊髄・脊椎疾患、末梢神経疾患

変形性頸椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症、腰椎分離すべり症  など

 

■ その他

 

 

主な疾患と治療

■ くも膜下出血

脳の動脈にできた瘤(脳動脈瘤)が破裂することにより発症します。突然の激しい頭痛、嘔気嘔吐、意識障害などが主な症状です。
病院へ受診(救急搬送)された患者さんの瘤はいったん出血が止まっているのですが、放置すると再破裂を起こします。 再破裂予防の処置を行うことが極めて重要です。
くも膜下出血を発症された破裂脳動脈瘤に対して脳動脈瘤ネッククリッピング術を行っています。動脈瘤の部位や性状に応じて血管内手術による脳動脈瘤コイル塞栓術も選択します。

 

■ 未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤は一般成人の約4~6%がこれを有すると言われています。 近年脳ドックの普及やCT 、MRIなどの普及により、急激に多く発見されるようになってきています。未破裂脳動脈瘤は大きくなって神経を圧迫して症状を出すことがごく希にありますが、一般的には無症状です。
破裂すれば、くも膜下出血を発症します。正確な破裂率は未だ不明ですが概ね年間1%程度と考えられています。
未破裂脳動脈瘤が発見された場合には、その医学的情報について正確かつ詳細なインフォームド・コンセントを行なった上で治療法を選択し提案させていだきます。 動脈瘤が硬膜内にある場合には原則として手術的治療を検討します。
脳動脈瘤ネッククリッピング術を第一選択に行っていますが、 動脈瘤の部位や性状に応じて血管内手術による脳動脈瘤コイル塞栓術も選択します。また、慎重に経過観察を行う方針とする場合もあります。

 

■ 脳内出血

突然の頭痛・意識障害・片麻痺・失語症・構語障害などで発症します。症状は出血の部位や大きさにより様々です。
高血圧症が原因で発症する場合が多く、高齢者の場合は脳の血管にアミロイドという物質が沈着して血管壁が弱くなり発症する場合が有ります。開頭による血腫除去術やCTを用いた定位的血腫吸引術を使い分けて手術を行っています。
機能予後を重視し理学療法士・言語療法士と連携を取りながら治療を進めています。また、リハビリテーション専門病院と連携し、早期のリハビリテーション治療にも力を注いでいます。

 

■ 脳梗塞(虚血性脳血管障害)

突然の片麻痺・感覚障害・失語症・構語障害・意識障害などで発症します。
脳梗塞に対する急性期治療を行うとともに血行再建術 ( バイパス術 や内頸動脈血栓内膜剥離術)などの慢性期予防的治療も積極的に行っています。機能予後を重視し理学療法士・言語療法士と連携を取りながら治療を進めています。また、リハビリテーション専門病院と連携し、早期のリハビリテーション治療にも力を注いでいます。

 

■ 頸部内頸動脈狭窄症

症候性および無症候性内頸動脈狭窄症に対して脳梗塞の予防目的の手術である内頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)を第1選択に行っています。
高齢者,冠動脈疾患の合併などのハイリスク症例には頸動脈ステント留置術(CAS)も選択します。
頸動脈病変にしばしば合併する心臓の冠動脈疾患に対しても豊富な経験を誇る循環器病研究センターとの連携によりスムーズに対応できるのが当センターの特徴のひとつです。

 

■ 脳腫瘍

良性脳腫瘍

髄膜腫や聴神経腫瘍などの良性腫瘍に対して、腫瘍周囲の大切な組織(神経,血管,脳実質など)を傷つけないよう手術を行うために、数々のモニタリング(監視)を行いつつ、顕微鏡下手術(マイクロサージェリー)の技術を駆使して安全に最大限の摘出を行います。
下垂体腺腫に対しては、経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術を行い低侵襲手術を実践しています。

 

悪性脳腫瘍

神経膠腫などの悪性脳腫瘍は手術で完全に摘出することが難しく、手術後、放射線治療や抗がん剤による化学療法が必要となります。
腫瘍摘出術、放射線療法、化学療法を適切に組み合わせ、患者さんのQOLを最大限に尊重した治療を実践します。

 

■ 三叉神経痛や顔面痙攣

三叉神経痛は顔面や口の中に電気が走るような、もしくは針で刺すような鋭い痛みが瞬間的に起こります。 歯を磨いたり、 顔を洗ったり、食事をしたりする動作にて痛みが誘発されます。
内服薬の治療(カルバマゼピン)にて一定の効果を認める場合がありますが、効果が不充分な例に対して外科的治療が選択されます。
顔面痙攣は一側の目・口の周囲・頬の筋肉がピクピクと勝手に動く疾患で、緊張すると増強する傾向があります。有効な内服薬はなく、ボツリヌス療法が行われる場合がありますが、治療効果の持続性と根治性の観点から外科的治療が選択されます。両疾患とも、頭の中で,脳の神経(三叉神経、顔面神経)が脳の小さな血管で圧迫,刺激されて起こると考えられています。全身麻酔下で顕微鏡を使って、神経を圧迫している血管を移動させる手術(微小血管減圧術)が効果的です。 当科では、これらの手術を万全の安全管理のもとに行っています。

 

■ 頭部外傷

急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫など、緊急対応が必要な疾患に対して迅速な外科的手術を行います。
慢性硬膜下血腫は、比較的ご高齢の方が頭部を打撲したあと、少し時間が経ってから徐々に血腫が形成される病気です。局所麻酔にて頭蓋骨に小さな孔を開けて貯まった血腫を洗い流す手術を行います。

 

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